シミュレーショングループ

低次元Si結晶のフォノンと熱の挙動解析

Si結晶をナノワイヤ型にすると、バルク結晶と比べて、熱伝導率が著しく低下することが知られています。我々は、Si結晶の表面を覆う酸化膜(SiO2膜)が、その鍵を握っていると考えています。SiO2とSiを同時に扱えるMD法を用いて、酸化膜で覆われた低次元Si結晶の熱伝導率やフォノン分散関係を計算し、その特異な熱的特性の起源を研究しています。

High-k絶縁膜の界面ダイポール層の起源

MOSFETのゲートリークを抑制するため、高誘電率(high-k)酸化物がゲート絶縁膜に用いられるようになりましたが、high-k膜にできる極薄いSiO2膜との間に電気ダイポール層が形成され、これがMOSFETのしきい値電圧をシフトさせることが知られています。このダイポール層の起源が、high-k/SiO2界面におけるイオンの偏移動で説明できる可能性が指摘されており、当グループではこれをMD計算で検証しています。

EMC-MD法によるナノデバイスの特性バラつきシミュレーション

半導体中の伝導電子一粒一粒の運動をMD法で記述して、ナノデバイスの電気特性のシミュレーションを行っています。連続体近似の下でドリフト-拡散方程式を解く従来法と比べて、離散的に分布する不純物の静電場や、電流の時間的な揺らぎを容易に再現できますが、計算に時間がかかる点が問題でした。私たちは、グラフィックス用プロセッサ(GPU)を使った並列計算でこの計算を高速化し、デバイス特性のバラつきの統計解析を可能にしました。

ダイナミック・ボンドオーダーポテンシャルの開発

MDシミュレーションの成否は、採用する原子間相互作用モデルの性能で決まります。私たちは、多元素混在系に適用でき、化学反応も再現できる、究極の万能相互作用モデル「ダイナミック・ボンドオーダーポテンシャル」を開発しました。現在、Si-C-O3元素系にダイナミック・ボンドオーダーポテンシャルを適用し、SiC表面の酸化過程のシミュレーションに取り組んでいます。

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